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日本酒とは?造り方・歴史・文化を唎酒師がわかりやすく解説

日本酒
紬

日本酒って知っているようで意外と知らないかも
そもそも、どんなお酒なんですか?

日本酒は、主に米・米麹・水を使い、酵母の働きによって発酵させて造るお酒です。ただ、今の日本酒になるまでには長い歴史があって、造り方も飲まれ方も少しずつ変わってきたんですよ。

日本酒は、日本を代表するお酒のひとつです。

米を原料として造られることは知っていても、

「どうやって米からお酒になるの?」
「日本酒はいつからあるの?」
「純米酒や吟醸酒って何が違うの?」

と聞かれると、意外と答えるのは難しいかもしれません。

実は日本酒は、米を発酵させて造るだけのお酒ではありません。

酒造りの技術だけでなく、米作り、地域の水、流通、食文化、神事など、さまざまなものと関わりながら現在の姿になってきました。

この記事では、日本酒を「造り方・歴史・文化」の3つの視点から見ていきます。

この記事でわかること
✔ 日本酒とはどんなお酒なのか
✔ 日本酒は何を原料にしているのか
✔ 日本酒ができるまでの工程
✔ 酒造好適米や精米がなぜ重要なのか
✔ 日本酒にはどのような種類があるのか
✔ 日本酒がどのように発展してきたのか
✔ 日本の文化と日本酒がどう関わってきたのか

日本酒とは?

日本酒とは、米・米麹・水などを原料に、酵母の働きを利用して発酵させて造るお酒です。

一般的には「日本酒」と呼ばれていますが、法律上の分類では「清酒」という言葉が使われます。

日本酒造りで特に重要なのが、米をそのまま発酵させるのではなく、麹の働きによって米のデンプンを糖に変えることです。

そして、その糖を酵母がアルコールへと変えていきます。

つまり、

米のデンプン

麹が糖に変える

酵母が糖をアルコールに変える

日本酒になる

という流れです。

この仕組みが、日本酒の大きな特徴のひとつです。

日本酒造りには「麹」が欠かせない

日本酒について知るなら、まず覚えておきたいのが「麹」です。

米にはデンプンが多く含まれていますが、酵母はデンプンをそのままアルコールに変えることはできません。

そこで登場するのが麹。

麹菌の働きを利用して、米のデンプンを酵母が利用できる糖へと変えていきます。

そして同じ仕込みの中で、酵母がその糖をアルコールへ変えていきます。

このように、糖を作る働きとアルコールを作る働きが並行して進むことが、日本酒の発酵を理解するうえで重要なポイントです。

日本酒は「糖化」と「発酵」が同時に進む

日本酒では、麹が米のデンプンを糖に変える「糖化」と、酵母が糖をアルコールに変える「発酵」が、もろみの中で並行して進みます。
この特徴は「並行複発酵」と呼ばれ、日本酒の造りを知るうえで重要なポイントです。

日本酒は何からできている?

日本酒の基本的な原料は、米・米麹・水です。

そこに酵母などが関わり、日本酒が造られていきます。

日本酒造りでは、食用米とは少し性質の異なる酒造好適米が使われることがあります。

山田錦、五百万石、美山錦、雄町などが代表的な品種です。

酒造好適米は、酒造りに適した性質を持つよう改良・選抜されてきた米。

特に米の中心部分にある心白や、麹を造りやすい性質などが酒造りに活かされています。

ただし、日本酒は必ず酒造好適米だけで造られるわけではありません。

食用米などが使われるケースもあり、どんな米を使うかも酒蔵ごとの個性につながります。

精米

玄米の表面には、たんぱく質や脂質などが多く含まれています。

そのため、日本酒造りでは米の表面を削る「精米」が行われます。

どこまで米を削るかを表すのが精米歩合です。

例えば精米歩合60%なら、玄米の重量に対して60%になるまで精米したという意味。

つまり、40%分を削ったことになります。

日本酒造りでは、水も重要な原料です。

仕込み水として使われるだけでなく、洗米や割水などにも使われます。

そのため、酒蔵がどのような水を使っているのかも、日本酒を知るうえで面白いポイントです。

日本酒の造り方

では、実際に米から日本酒ができるまでを見てみましょう。

日本酒造りは、ひとつひとつの工程が独立しているわけではありません。

米を削り、蒸し、麹を造り、酒母を育て、もろみを発酵させる。

それぞれの工程がつながることで、日本酒が完成します。

① 原料となる米を選ぶ

まずは酒造りに使う米を用意します。

酒造好適米を使う酒蔵も多くありますが、使用する米の種類は日本酒によってさまざまです。

米の品種や性質は、その後の酒造りにも影響します。

② 米を精米する

玄米の表面を削り、酒造りに適した状態にします。

ここで重要になるのが精米歩合です。

吟醸酒や大吟醸酒などでは、より高い精米を行った米が使われることがあります。

ただし、「たくさん削れば必ずおいしい」という単純な話ではありません。

どの程度まで精米するかも、酒蔵が目指す酒質によって変わります。

③ 洗米・浸漬

精米した米を洗い、表面の糠などを取り除きます。

その後、水に浸して米に水分を吸わせます。

この浸漬は、次の「蒸す」工程に大きく関わる重要な作業です。

④ 蒸米

水を吸わせた米を蒸します。

日本酒造りでは、炊飯器で炊くように米を柔らかくするのではなく、蒸して酒造りに適した状態にします。

蒸した米は、

  • 麹を造る
  • 酒母を造る
  • もろみに仕込む

など、さまざまな工程で使われます。

⑤ 麹を造る

蒸した米の一部を使い、麹を造ります。

ここでは蒸米に麹菌を繁殖させ、米のデンプンを糖に変えるための力を持った麹を育てます。

日本酒造りの中でも特に重要な工程のひとつです。

⑥ 酒母を造る

酒母は、簡単にいえば日本酒を発酵させるための酵母を育てる工程です。

元気な酵母を増やし、その後のもろみの発酵につなげます。

⑦ もろみを発酵させる

酒母に、蒸米・米麹・水などを加えて仕込み、もろみを造ります。

もろみの中では、

麹がデンプンを糖に変える

酵母が糖をアルコールに変える

という働きが進んでいきます。

この工程が、日本酒のアルコールや香り、味わいを生み出す中心部分です。

⑧ もろみを搾る

発酵を終えたもろみを搾り、液体と酒粕に分けます。

ここで得られた液体が、私たちが日本酒として飲んでいるものにつながります。

ただし、搾ったらすぐに商品として完成するわけではありません。

⑨ ろ過・火入れなどを行い、仕上げる

搾った日本酒は、必要に応じてろ過や火入れなどの処理が行われます。

その後、貯蔵や調整を経て瓶詰めされ、商品として出荷されます。

なお、火入れを行わない「生酒」などもあり、すべての日本酒が同じ工程を通るわけではありません。

こうして、米から始まった原料が、さまざまな工程を経て一杯の日本酒になります。

紬

米を削るところから始まって麹を造ったり酵母を育てたり…思っていたよりずっと複雑なんですね

そうなんです
しかも、同じ米や水を使っていても麹の造り方や発酵の管理などで味わいが変わります。『酒蔵によって個性が違う』と言われる理由のひとつですね

日本酒の歴史

日本酒には、長い歴史があります。

その起源をたどると、米を使った酒造りが日本に広がった古代までさかのぼります。

ただし、ここで注意したいのが、

「日本酒には約2000年の歴史がある」=「2000年前から今と同じ日本酒があった」ではない

ということです。

日本酒は、時代ごとの酒造技術や暮らしの変化を取り込みながら、少しずつ現在の姿になってきました。

古代|米から酒を造る文化が生まれる

日本で米を使った酒造りがいつ始まったのかについて、明確な起源を一つに決めることはできません。

稲作が広がるとともに、米を使って酒を造る文化も生まれていったと考えられています。

古代の酒造りには、現在とは大きく異なる方法もありました。

例えば、米を口の中で噛んでから吐き出し、唾液に含まれる酵素を利用して発酵させる「口噛み酒」です。

もちろん、現在の日本酒とはまったく違います。

それでも、こうした酒造りが日本における米と酒の長い関係の一端を示しています。

奈良・平安時代|酒が社会や儀礼と結びついていく

奈良・平安時代になると、酒造りに関する記録も増えていきます。

宮廷では酒造りを担当する役職が置かれ、酒は宴だけでなくさまざまな儀礼とも関わっていました。

また、寺院でも酒造りが行われるようになります。

この時代の酒は、現在のように「食事と一緒に楽しむお酒」というだけではありません。

儀礼や祭事、宴など、社会のさまざまな場面で使われる存在でもありました。

室町~戦国時代|酒造りが商業として発展

中世になると、酒造りはさらに大きく発展します。

京都などでは酒を造って販売する「酒屋」が増え、酒造りが商業として成立していきました。

さらに、この時代には現在の日本酒につながる重要な酒造技術も発達します。

精米した米を使う「諸白造り」や、酒を加熱して保存性を高める「火入れ」など、現在の日本酒にもつながる技術が登場しました。

もちろん、この頃の酒が現在の日本酒と同じだったわけではありません。

しかし、古代から続いてきた酒造りが、少しずつ現代につながる形へ近づいていった時代と見ることができます。

江戸時代|酒造技術と庶民の酒文化が広がる

日本酒の歴史を考えるうえで、江戸時代は特に重要です。

酒造りの技術がさらに発達するとともに、酒の流通も大きく変化しました。

灘・伊丹・池田などの酒どころで造られた酒が江戸へ運ばれ、都市部では酒を提供する店も増えていきます。

こうして日本酒は、特定の身分の人だけが楽しむものではなく、庶民の暮らしにも身近な飲み物になっていきました。

食事と一緒に酒を飲む「居酒」の文化も広がり、燗酒なども日常的に楽しまれるようになります。

ここが日本酒の歴史の面白いところです。

酒造技術が発達したことと、日本酒を楽しむ人が増えたことが、同じ時代に進んでいった。

日本酒は、造る技術だけでなく、飲む文化と一緒に発展していったのです。

紬

昔のお酒って偉い人が飲むものっていうイメージがあったんですけど、江戸時代には普通の人も飲んでいたんですね

そうなんです。
もちろん時代や地域によって違いはありますが、江戸時代になると酒造りだけでなく、流通や飲食店も発達して日本酒がかなり身近な存在になっていきました

明治時代以降|伝統に科学が加わる

明治時代になると、日本酒造りにも科学的な研究が取り入れられていきます。

醸造についての研究が進み、酵母や微生物に関する知識も蓄積されていきました。

その後も、酒米の改良、精米技術、温度管理、衛生管理などが進歩します。

現在の酒蔵では、昔から受け継がれてきた技術を大切にしながら、最新の設備や科学的な知識を活用して酒造りを行うところもあります。

つまり日本酒は、

伝統を守りながら、技術によって進化してきたお酒

ともいえます。

日本酒と日本の文化

日本酒は、長い間、日本人の暮らしと深く関わってきました。

その代表的なものが、神事や祝い事です。

神事と日本酒

神社などで日本酒が供えられているのを見たことがある人も多いでしょう。

日本では古くから、酒を神様への供物として扱う文化がありました。

祭りや神事で酒が用いられたり、神様に供えた酒をいただいたりする習慣もあります。

日本酒には、単に「飲んで楽しむ」というだけではなく、人と神様をつなぐものとしての役割もあったのです。

祝い事と日本酒

日本酒は、祝い事とも深く結びついています。

結婚式で行われる「三三九度」や、酒樽を開く「鏡開き」は、その代表例です。

現在では儀式として見ることが多くなりましたが、こうした文化が残っていること自体、日本酒が日本の生活に長く根付いてきたことを示しています。

食文化と日本酒

もちろん、日本酒と食事の関係も欠かせません。

刺身、焼き魚、煮物、寿司など、日本酒と相性の良い料理はたくさんあります。

また、日本酒は温度によって香りや味わいの印象が変わります。

冷やして楽しむものだけでなく、ぬる燗や熱燗など、温度を変えて楽しむ文化があるのも日本酒ならではです。

日本酒にはどんな種類がある?

日本酒には、原料や造り方などによってさまざまな種類があります。

特にラベルでよく見るのが

  • 純米酒
  • 純米吟醸酒
  • 純米大吟醸酒
  • 吟醸酒
  • 大吟醸酒
  • 本醸造酒

などです。

これらは「特定名称酒」と呼ばれる分類に関係しています。

例えば、吟醸酒や大吟醸酒では、米を一定以上精米するなど、それぞれに条件があります。

一方で「純米」という言葉は、米・米麹などを原料とし、醸造アルコールを添加していないことを示します。

このあたりを知っておくと、日本酒のラベルを見るときにも意味がわかりやすくなります。

日本酒の味わいは何で変わる?

日本酒の味わいは、ひとつの要素だけで決まるわけではありません。

例えば、

  • 米の品種
  • 精米歩合
  • 酵母
  • 発酵のさせ方
  • 日本酒度
  • 酸度
  • アルコール度数
  • 貯蔵方法
  • 飲む温度

など、さまざまな要素が関係します。

そのため、同じ「日本酒」でも

甘く感じるもの
すっきりしたもの
香りが華やかなもの
酸味が印象的なもの

など、味わいは実にさまざまです。

例えば「フルーティーな日本酒」と呼ばれるものもあれば、キレのある辛口タイプもあります。

日本酒をもっと楽しむために知っておきたいこと

ここまで見てきたように、日本酒には知っておくと面白い要素がたくさんあります。

酒米、精米歩合、特定名称酒、酵母、甘口・辛口、酸度、温度。

最初から全部覚える必要はありません。

例えば酒屋で一本選ぶときに、

「このお酒はどんな米を使っているんだろう?」
「精米歩合は何%なんだろう?」

とラベルを眺めてみるだけでも、日本酒の見方は少し変わります。

もっと詳しく知りたくなったら、日本酒の入門書や図鑑を使って調べながら飲むのも面白い方法です。

一冊手元に置いておけば、気になった銘柄のことを調べたり、酒米や酒蔵について知ったりしながら楽しめます。

日本酒を「ただ飲む」から「知りながら飲む」に変えてみると、同じ一杯でも違った楽しみ方ができます。

唎酒師が感じる日本酒の魅力

日本酒の面白さは、一つの正解に決められないところだと思います。

同じ米を使っていても、酒蔵が違えば味わいが変わります。

同じ酒蔵の日本酒でも、使う酵母や精米歩合、造り方が変われば印象も変わります。

さらに、冷やして飲むのか、燗にするのか。

どんな料理と合わせるのか。

どんな器で飲むのか。

そこまで含めれば、一杯の日本酒を楽しむ方法はかなり広がります。

そして、その背景には長い歴史があります。

古代から続いてきた米と酒の関係。

酒造技術を発展させてきた人たち。

江戸時代に酒を運び、売り、楽しんだ人たち。

そして現在も酒造りを続ける酒蔵。

そう考えると、日本酒は単なる「米から造ったお酒」ではありません。

長い時間の中で、技術と文化が積み重なってできた飲み物。

そこに日本酒の大きな魅力があるのではないでしょうか。

紬

こうやって歴史まで知ると普段飲んでいる日本酒もちょっと違って見えますね!

難しいことを全部覚える必要はありません
まずは気になったところを一つずつ知っていく…
それだけでも日本酒はかなり面白くなりますよ

まとめ|日本酒とは、歴史と技術、文化が詰まった日本の酒

日本酒とは、米・米麹・水などを原料に、麹や酵母の働きを利用して造られる日本の伝統的なお酒です。

その歴史は長く、古代の酒造りから現在まで、さまざまな技術や文化を取り込みながら発展してきました。

特に重要なのは、「約2000年の歴史があるから、昔から今と同じ日本酒だった」というわけではないこと。

酒造技術が発達し、流通が広がり、江戸時代には庶民の生活にも日本酒が身近なものになっていきました。

そして日本酒は、神事や祝い事、食文化など、日本人の暮らしとも深く結びついています。

酒米や精米歩合、特定名称酒、酵母、甘口・辛口など、知れば知るほど奥深いのも日本酒の魅力です。

まずは難しく考えず、

「この日本酒は、どんな米で造られているんだろう?」

そんなところから興味を持ってみてください。

一杯の日本酒の向こう側にある、酒蔵や地域、そして長い歴史まで知っていくと、日本酒を飲む時間がもっと面白くなるはずです。

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